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年忘れ例のアレ大会!

17話 誰もいない部屋

17話 誰もいない部屋

クランの中でもう一人クラン生がいるという噂が立つ。その生徒の名はリコリス。だが教室にも現れず、食堂にも姿を見せず、リコリスの姿を見たものは誰も居ないという。リコリスの部屋はクランの女子寮のどこかにあるはずだが、どこにあるのか誰も知らない。幻の生徒リコリス

スノウは僅かだがリコリスのことを覚えているという。いつの間にか姿が見えなくなってしまった。なぜいなくなったのか覚えていないというスノウ。死んだのかもしれないと曖昧な答え。

紫蘭がメガネを掛けて「新聞」を読んでいる。スノウはそういう「外の世界」のものを不用意に広げてもらっては困るわと苦言を呈する。読み終わったら暖炉にくべるよという紫蘭だが、ある記事が気になる。そこには心臓を繰り抜かれて死んでいる男の死体が見つかったと書かれていた。

リコリスに気をつけな」「は?なんだいそれは」「あなたが昔、私にそういったのよ。アレはどういう意味だったのかなって」「あたしが、かい?」「そうよ?」「覚えてないね。。。何年くらい前だい?」

「2、300年くらい前のことかしら」「そんなに前のことはもう忘れた」「あなたは都合の悪いこと全部それね」

紫蘭はメガネを外しながら言った。

「いや、本当に覚えていないのさ。そもそもリコリスってどんな娘だったかね」「それを聞こうと思ったのよ」「お前が忘れてしまったお前の友達のことなんかあたしが知るものかい」

「私とリコリス、友達だったの?」「そうだろう?違うのかい?」

「残念だけど、忘れてしまったわ」スノウは笑って目の前の書類に集中し始めた。

カトレアがマリーゴールドリコリスの噂を話す。先日の紫蘭との言い争い以来、塞ぎごみがちだったマリーゴールドはそっけなく「クランの伝説とかそういうものには興味が無いんで」と突き放す。せっかく気分転換させようと思ったのにと呟くカトレア。その時、生徒の1人が食堂の真ん中で暴れだし、短剣を振り回して取り押さえられるという騒ぎが起きる。キャメリアたちに取り押さえられる生徒。一部始終を見ていたカトレアとマリーゴールドだが、遠くからその様子を探っている一人のクラン生がいる。今、誰かに見られてましたよねというマリーゴールド。周囲を見回してシルベチカと会話している人物が気になる。カトレアはあんな子知らないという。マリーゴールドは念のため、クランの女生徒の顔は全員分かりますか?とカトレアに確認する「もちろんよ。でもあの子は見たことがない」と断言するカトレア。だとすると外部のヴァンプでしょうか。確認のため愛想笑いを浮かべながら近づいていくマリーゴールド

「こんにちは。えっと、そちらの女性は?」「なに言ってるの?リコリスよ?」「そうでしたか。はじめまして」「え?」「前にお会いしたことありましたか?」

「さっき、教室でずっと話してたでしょ?なに言ってるの?」シルベチカが言った。マリーゴールドにはその記憶がない。リコリスと紹介された少女は「きっと私は印象が薄いのでしょう」とだけ言った。

マリーゴールドがカトレアのところに戻る。誰だって?訊くカトレア。「え?」「え?じゃないでしょ。名前よ」「誰の?」「は?」「誰の名前ですって?」「今、名前を聞きに行ったんじゃないの?」はっとしてシルベチカの方を見るマリーゴールド。だが、何を話したのか全く覚えていない。シルベチカと談笑する女生徒

「今、名前聞きに行きましたか私」「行ったわよ。聞いてたじゃない!」「もう一度聞きに行きます」

「こんにちは。えっと、そちらの女性は?」「なに言ってるの?リコリスよ?」「そうでしたか。はじめまして」「え?」「前にお会いしたことありましたか?」

「さっき、全く同じ話をしたわ!」「きっと私は印象が薄いのでしょう」リコリスは微笑むと席を立って食堂から出て行った。シルベチカはマリーゴールドの態度に腹を立てている。

カトレアのところに戻ったマリーゴールドはしきりに首を傾げている。「なんだか、シルベチカさんに怒られてしまいました」「なにか酷いこと言ったんでしょ」「そんなはずはないんですが、その、お友達に対する態度がよろしくないとかで」「お友達?シルベチカはずっと一人だったわ」「そのはずなんですが」マリーゴールドは首を傾げた。カトレアは改めて幻の女生徒、リコリスの伝説について語り始める。そう言うの興味ないんですよ。職業柄、人探しは「仕事」なんでプライベートではやりたくないというマリーゴールド。あなた本当に何者なの?改めて疑い深く睨みつけるカトレア。そんなに怖い顔しないでくださいよと困り顔のマリーゴールド


監督生室。紫蘭によると暴れた生徒は繭期が重篤化しており、幻覚を見て暴れだしたのではないかという。そんなに重篤な繭期のヴァンプが自由に食堂に出入りしていたんですか?とマリーゴールドは聞くが、つい先日までこの娘は最も繭期の軽い部類の生徒だったと言う。生徒の所持品を調べた所、クランで支給したものではない薬物を持っている事がわかったと紫蘭。これを中央に送り分析を依頼させたところ、この薬は「繭期を重篤化させる」効果を持つ一種の「ウル」であることがわかったという。

「この薬の恐ろしいところは人為的にかつ短時間に繭期を悪化させることで、服用者にイレギュラーによく似た症状を引き起こさせるところにある」「イレギュラー?」「重篤な繭期の少年少女の一部に現れるとされる超常的な力よ」「カトレアさんの能力も?」「恐らくはね」「嫌だわそんなの」「ウルを飲みさえすれば抑えられるだろう?」「その生徒にはなにか現れたんですか?その、イレギュラー?」「残念ながら強い幻覚と幻聴を得ただけで特別な何かが出た形跡はない」

「問題は」「この生徒がどのようにしてクスリを入手したか」「クスリを与えたものは何の目的でクランの中でそんなものをばらまくのか」「その背後にあるものは何か」「この3点だね」

メンバーが解散した後、監督生室に残るマリーゴールド。まだ何かあるんでしょう?この件には。

「この薬は、壊滅したTRUMP信者たちがネヴラ村などで服用していたモノによく似ている」「連中は、TRUMPを呼ぶと言って、犠牲者の心臓を繰り抜き、その心臓を祭壇に捧げるという狂った儀式を繰り返していた」「呼んでどうするんです?」「不老不死にしてもらんだと」「バカバカしい。TRUMPなんていやしないのに」「確かに、TRUMPはいないかもしれない。だがTRUMP信者は違う。連中は摘んでも摘んでもはびこる雑草のようなもの」「もしかすると、このクラン内もTRUMP信仰みたいなものを布教している連中がいるのかもしれませんね」

「ところで変な噂がクランの中で流行ってるって?」「リコリスですか?」

リコリスという生徒は、いたよ。名簿にも名前が残っている。ただ、いつの間にかいなくなった」

「クラン暮らしが嫌になって出て行ったんでしょう?」「そんなことは私と竜胆がさせないよ」

「追い詰めて、連れ戻す。何年掛かっても」「。。。なかなかに酷いですね」「クランの秘密を持ったまま外にだすわけにはいかないだろ?」「それで、罰を与える?」「または埋める。庭に」「おかわいそうに」

「だがリコリスについてはその後どうなったかの記録がない。私にも、スノウにも覚えがないのだ」「忘れんたんでしょう要するに」「記録くらい残すだろう?」「消された?記憶?」「それならば存在した事自体を消してしまえばいいい」

「いたということは覚えているのにいなくなったことを覚えていないというのは、記憶操作としては破綻している。ずっと記憶には残り続けるということだから」「覚えていても害がないということでしょう?」「なら消す必要もなかったはずだ」「ファルスさんでしょうかね、その不手際は」「あの子はこの時期にはもうそんなことはやめているよ。全て私たちが手を汚せばよいのだから」「ですが理屈から言えば可能なのはファルスさんですよね」

「もしかするとリコリスは本当にクランにいるのかもしれない。たったひとりきりで」紫蘭はそう言った。その苦しげな顔。マリーゴールドリコリスのことを調べてみる気になっていた

マリーゴールドはカトレアたちにクラン内でのグループの調査を依頼し、自分は徒党を組んでいない個人の洗い出しを開始した。クラン内のグループにカップルは含むの?とカトレア。もちろん。そこがこの調査の肝ですよと答えるマリーゴールド。あなた監督生みたいなことするのねと言うカトレア。その報告は紫蘭の眉をひそめさせた。「風紀が緩みきってるな。。。」「ファルスが倒れて、引き継いだ監督生二人があの調子では仕方ないわ」諦めたように報告書を投げ出すスノウ。そこに記された男女クラン生の相関図。

シルベチカの部屋。いつものようにタブレットからウルを取り出し服用する。ドアがノックされ入ってくるリコリス「ちょっとよくって?」「なあにリコリス」「監督生が風紀の乱れを調べているって聞いたけど、本当?」「ううん、私聞いてないよ?キャメリアもそんなこと言ってなかったし」「そう。じゃあ、私からもキャメリアに聞いてみるね?」姉妹のように仲の良い2人。「キャメリアとは上手く行ってるの?」


マリーゴールド、報告書を手に男子寮の監督生室をノックしようとする。だが、その中から小さく、リズミカルに繰り返される女の声が聞こえることに気づく。オダマキが通りすがりに「開けたらいけんよ。今、シルベチカとバリしよっとっとるけんね」と声をかける。マリーゴールドは確か報告書ではオダマキはローズと出来ていると記載があったと思い出す。次第に女の声が甲高くなっていく部屋を離れるマリーゴールドオダマキは廊下のベンチに腰掛けてしんどそうにしている。ご病気ですか?とマリーゴールド。繭期じゃけんね、しんどそうに答えるオダマキ。ウルを取り出すマリーゴールドだが、オダマキは自分のものがあると言って服用する。もう普通のウルは全く効かないといい、もうすぐ自分は死ぬと自嘲するオダマキ。薬を飲んだオダマキは元気を取り戻し、マリーゴールドにモーションをかけてくる。

「(おかしい。いくらウルでもこんなに急に効くわけがない。そもそも普通でないウルってなんだろう)」

オダマキは「自分のウル」をマリーゴールドに渡し「キモチの良くなるクスリ」「繭期のことを忘れさせてくれるクスリ」だといい服用を勧める。マリーゴールドは弱々しげに「え、でもこういうの飲むのは禁止されているし、怖いわ」と目を潤ませて言う。そんなことなか、安心させてやるけん、と、しきりに自分の部屋に誘ってくるオダマキ(脳みそがクスリのやり過ぎで腐ってるのかこいつ)と思いながらついていくマリーゴールド

オダマキの部屋。楽にしてとマリーゴールドに上着を脱ぐよう促すオダマキ。(こいつは一分一秒でも早くオンナのカラダに手を付けたいのか)とマリーゴールド。クスリについて話を聞き出そうとするマリーゴールドオダマキはクスリを手にすると水差しの水を口に含んでいきなりマリーゴールドにくちづけした。首を抱かれ抵抗できないマリーゴールド。口移しにクスリを流し込まれる。しばらく抵抗したが無理やり飲み込まされるマリーゴールド。乱暴してゴメン、でもすぐに気持ちよくなるけんね、オダマキが服をはだけながら言う。その瞬間、マリーゴールドの意識がブラックアウトした。

(「君のお母さんに会いたい」ソフィが厳しい表情で言った。目の前に転がる心臓を繰り抜かれた死体。マリーゴールドは呆然として「母さんじゃないわ。。。母さんがこんなことするわけない」そう呟く。ソフィの同僚がなにやら耳打ちしている。「とにかくお母さんに会いたい。彼女、今どこに?」なぜ信じてくれないのソフィ?あなた私のフィアンセでしょう?「残念だが、君のお母さんが」マリーゴールドは叫んだ「違うわ!母さんは違う!」)

「ちょっと」食堂。眠たそうにしているマリーゴールドに声をかけてくる女「あんた、オダマキと寝ただろ?」ローズだった。その言葉に目を丸くしているカトレア。「アイツは激しい運動を医者から禁じられてる。もちろんアレの方も!もしアイツに何かあったらアンタどうしてくれるんだい!」マリーゴールドはクスリの悪酔いが抜けないままローズに冷たく言った「そんなにカレとヤリたいなら好きにヤレばいい。アンタがヤラせないから他の女に手を出すんでしょう?」「なんだって?」「随分たまってましたよ、カ・レ・シ」「このアマぁ!」ローズはマリーゴールドに掴みかかった。


「馬鹿者!」監督生室。デスクを両手で叩いて怒鳴りつける紫蘭「お前はこのクランに腹を膨らませに来たのかいっ!」「いや、これは成り行きで」「あげくにそのオトコを巡って痴話喧嘩とか、ありえん!信じられん!」「ですから、油断しました」「これが撃ちあいだったら死んでるところなんだぞ!もう少し任務と真剣に向き合え!」その二人のやり取りを苦笑しながら聞いているスノウ。「避妊は?」「できませんでした」「じゃあ、要経過観察ね」「ピルは飲んでるのよ」「でも、アタリもあるでしょ」その会話に居心地悪そうにしているカトレア。

部屋から退出するときスノウに事の次第を話すカトレア「おかしかったわ。いつものマリーゴールドらしくなかった」「あの子はいつでも皮肉屋でしょ?」「そんな感じじゃなかった。なんていうか、繭期のヴァンプみたいだった」「あら、あの子、繭期は終わったんじゃなかったかしら?」「ねぇ、あなた達どういう関係なの?」

「関係ないわ。あんな子は知らない」スノウは突き放すように言うといつもの巡回に向かった。カトレアは取り残されて。

これはひどいクスリです」机の上にオダマキの服用していた錠剤を置くマリーゴールド。「飲んだ瞬間、悪夢に引きずり込まれました」「イレギュラーは?」「何度イッてもイキタリない感じ。相手が求めてくる限り、何度でも身体を開いてしまう感じ。自分の意思とカラダがばらばらにされて、何かに操られてサセらてるような気がしました」「感受性の拡大?」「そんなものじゃない。本当に、自分が受信機になったような感覚」

「誰が入り込んできたように感じた?」「知らない女。いや、どこかで会ったような気はするんですが」「クラン内で?」「おそらく」「そいつが何らかの意図を持ってクスリをばらまいてるのかもしれないね」

「リストアップの過程でクラン生の顔と名前は一通り覚えましたが、私の中に入ってきた女はその中にはいなかった」「幻の女」「気をつけたほうがいい。お前は新顔。何をやっても目立つ。狙われているかもしれない」警告する紫蘭

リコリスはもしかするとイレギュラーの持ち主でしたか?尋ねるマリーゴールド

「本当に何も覚えていないんだよ」「リコリスが消えた原因が私達にあるのかどうかもわからない」「顔も覚えていない」「こんなことは他の子ではないんだけどね」

リコリスが消えた原因が紫蘭さんたちにある可能性もあるんですか?」「かもしれない」

マリーゴールドの部屋。合鍵を使って入り込んでいるシルベチカ。マリーゴールドのデスクの引き出しを開け、ウルをすり替える。「楽しい夢を」

入ってきたマリーゴールド紫蘭の苦しげな言葉に気を取られている。確かめもせずにすり替えられたウルを服用する。ブラックアウト。


「この糞ビッチ!」ローズがマリーゴールドの頬を思い切り張り飛ばした「雌犬!売女!泥棒!」オダマキの部屋。ベッドから叩き落とされたマリーゴールド。頬をうたれた衝撃で正気に戻ったが、今まで何をしていたのかわからない。記憶が完全に飛んでいる。わかっていることは、マリーゴールドオダマキも服を着ていないということ。ローズが怒りに満ちた目で自分を睨んでいる、だが、マリーゴールドはふわふわとして今までしていたことの実感が無い。夢の中を彷徨っていたような気がする。スノウがキャメリアと一緒に現れた。


監督生室。紫蘭が一対一でマリーゴールドの襟首を締めあげて怒鳴っている。部屋を出るマリーゴールド。外で待っていたスノウが「あなたには余計なお世話かもしれないけど、紫蘭は本当にあなたのことを心配しているのよ。それだけはわかってあげて」 椅子に深々と腰掛けたままの紫蘭マリーゴールドはイライラから逃れるためにウルを飲む。また意識が飛んだ。


リコリスの部屋。マリーゴールドの鉢植。その花を首からねじ切るリコリス。これであの子もおしまい。


「そうでもないんですよ」マリーゴールドがそこに立っていた。花でいっぱいの部屋。「なるほど、ここが永遠に枯れない花を育てている花園だったんですね」マリーゴールドは冷たく言った。「はじめまして」「リコリスさん」

「どうしてここがわかったの」「それに、どうして私のことがわかるの」「みんな、私のことは忘れてしまうのよ?」「だから、はじめましてと言いましたよ?」

その女、リコリスは、問わず語りで話し始めた。自分は繭期の治療でこのクランに送られてきたが、そこでイレギュラーを発症した、と。リコリスのイレギュラーは「なにも忘れない」こと。だがそのペナルティとしてリコリスは誰に覚えてもらえなくなる。昨日まで親しくしていた友人、監督生から忘れられてしまったリコリスは、幻のクラン生として孤独な日々を過ごすことになる。だた1人、シルベチカを除いては。シルベチカだけは自分のことを覚えていてくれる。やがて、リコリスはシルベチカをも守るためにあらゆる手段を取ることを辞さなくなる。リコリスはシルベチカがいなくなったら自分は生きていけなくなると思った。

「なぜあなたなのことをみんな忘れてしまうのに、シルベチカさんは忘れないのですか?」「イレギュラー」「どちらの?」「2人のイレギュラーは相性が合うの。私はシルベチカの中からわたしの記憶を消すことができない。その代わり、シルベチカの見るもの、聞くもの、感じるものは全て私の中に流れ込んでくる」「セックスの時のイク感じも?」リコリスマリーゴールドを睨みつける。

「私はシルベチカの記憶を全部持っているの。あなたが過去、このクランで何をしたのか全部知っているの。あなたが忘れてしまった子も全部覚えているわ。あなたは、友達を殺したのよ!あなたのことを誰よりも大切にしていた友達を、刺し殺したの!」

「随分とお詳しい」「ちなみに、職業柄、この手で殺した同族は10人をくだりませんが、それはご存知で?」「私も殺すの?」「それはお館様が決めることです」「お館様なんかいないわ!みんな騙されているの!」「大人げないことを言う人だ」

「このクランは作られた箱庭。あなたもいずれ殺される。あの間抜けなファルスも、スノウも、紫蘭もただの人形にすぎない。いずれ殺されて、新しいファルスや、スノウや、紫蘭に置き換えられるだけ。自分は死んでないと思っているけど、殺され続けているの!わたしは知っている。あなたが死んだことも覚えているわ!マリーゴールド、あなたはリリーのイニシアチブを受けて燃えて灰になったのよ!」

「だから自分の手でこのクランをアンタの望む箱庭に作り替えようと思ったんですか。自分のイレギュラー能力と、このクスリを使って」「どうやらあなたは他の子とはどこか違うイレギュラーを持っているみたいね。でも無駄よ。この部屋で見たこと聞いたことは、何も覚えていられない。出た瞬間に全部忘れてしまう」

「教えてください。この花園は何なんですか」「永遠に枯れない花」「アンタ、キャメリアさんを愛しているんですか?」「人を愛するということがそんなにいけないことなの?」「チェリーさんがキャメリアさんを好きだったことを知っていますか?」「キャメリアは私のものよ!」「キャメリアさんが愛しているのはシルベチカさんです」

「私とシルベチカは二人で一人。永遠に離れることのない存在なのよ」「繭期で頭がおかしくなってしまったようですね」「違うわ!わたしは正常よ!」

「アンタとキャメリアさん、それにシルベチカ。男女関係には1人多すぎると思いますね。アンタの作る箱庭に、シルベチカさんの居場所ばないはずだ。アンタとキャメリアさんの恋物語で最後に邪魔になるのはシルベチカさんですからね」「この箱庭ごっこの最終的な帰結は、アンタがシルベチカさんを殺して、何くわぬ顔をしてすり替わるということですよ」「だから、最後にシルベチカさんを守るだろうチェリーさんを先に殺したんだ」「二人は幼なじみでしたからね」「どうでしょう。違いますか?」

リコリスは表情をなくした。感情のない、魔女の素顔。

「わたし、あなたを見くびっていたようだわ。あなた、誰?」

マリーゴールドはその瞬間、なぜ1人で花に囲まれているのか理解できなくなったが、ポケットにしまってあるメモを取り出して読み返した「リコリスの部屋を見つけた。会いに行く。このメモを見たらレコーダーを止めろ」

監督生室。携帯レコーダーを目の前にした紫蘭リコリスが言っていたことはこれだけかい?」「そのはずです。外の世界を見たことのない彼女に録音の操作は不可能でしょう」「しかし覚えていないのだろう?」マリーゴールドがまとめたリコリスとの会話の概要を眺める紫蘭

「本当に、リコリスはなぜイレギュラーを発症したのか、その理由については話さなかったんだね?」そのことをしきりに気にする紫蘭

「なにを恐れているんですか?」「何も覚えていない。だから怖いんだよ」「だから、何が?」

リコリスは私たちが産んだのかもしれない」紫蘭はポツリと呟いた

スノウ、カトレア、そしてキャメリアが集められた。リコリスの正体について熱弁を振るうマリーゴールドだが今ひとつ反応が薄いメンバー。特にキャメリアは「君にはスノウにいいががりをつけた過去があるからな」と言って疑いの目を向けている。紫蘭は「なぜキャメリアだけがマリーゴールドのことを忘れなかったのだろう」と疑問に感じる。なにか自分たちは間違っていないだろうかと感じる紫蘭

リコリスの部屋。記録上何十年も誰も使っていないはずの部屋。合鍵を使ってドアを開け中に踏み込むマリーゴールドたち。

「嘘だ」

そこは誰も居ない部屋だった。カビだらけのベッド。窓枠にうず高く積もったホコリが何十年もこの部屋が使われていないことを示していた。スノウが不愉快そうに言った「どういうこと?」「ここにリコリスがいたんだ」「リコリスって誰?」「本当にいたんだ!」「だからそれは誰?」

「ここに、花があふれていた。永遠に枯れない花をリコリスが育てていて、リコリスがシルベチカさんを操ってチェリーさんを殺したと、自分から告白したんです」「彼女はイレギュラーを生み出すクスリを持っていて、それを生徒たちにばらまいていた」「彼女はもう何十年も1人で生きていて、何十年分もの記憶を持っていると言っていました」「本当なんだ、信じて!」

「もういいわ」「また同じことの繰り返し」「あなたはきっとまた誰かを告発して、死ぬまでそれをやめないのんだわ」スノウが部屋を出ていこうとする。マリーゴールドは携帯レコーダーを出して「ここに証拠があるのよ、聞いて!」と叫んだ。紫蘭は表情を強張らせてマリーゴールドに「およし!」と言ったが興奮したマリ-ゴールドは聞かない。カトレアは人の声で喋り出す小さな箱を見て目を丸くしている。だが

すべてマリーゴールドの声だった。マリーゴールドはクスリでラリったような声で、1人で対話を繰り返し、昂奮し、勝ち誇ってテープが終わった。最後まで1人で話していた。絶句する紫蘭

「嘘よ…こんなのは嘘よ」「ねえ信じて本当にいたのよ」「本当にリコリスはこの部屋にいたのよ」「ねえ、信じてちょうだい、お願いよ!」白けきった空気の中でマリーゴールドの切ない叫びが響く。

「君、おかしいんじゃなのか?」キャメリアは不愉快そうに言って部屋を出て行く「待ってキャメリア、シルベチカが危ないのよ」「リコリスがあなたを狙っているの」「あなた達を守りたいのよ本当なのよ!」

「…いい加減にしてよ」「もうあなたの騒ぎに巻き込まれるのはウンザリだわ」「クランを出てから少しは変わったのかと思ったけど」「あなたの繭期は私には救いようがない」スノウが消え入るような声でつぶやく。紫蘭がそのスノウの頬を本気で叩いた「出ておいき!」スノウは少しだけ驚いたような顔をしたが、すぐ涙目になって出て行く。マリーゴールドはその背中に向かって「待って、戻ってきて!本当よ!本当にリコリスはいたのよ!」と大きな声で叫んだ。

「私、嘘じゃないわ。本当よ、本当にここにリコリスがいたのよ。嘘なんかついてない、おかしくなんかないわ、本当に私は見たのよ!」「花でいっぱいの部屋」「何十冊も並んだ日記帳」「あの子が作ったまがい物のウル」残った紫蘭とカトレアはただ黙ってマリーゴールドの言葉を聞く。

「ここに、あったのよ。でも、なくなってしまった」立ち尽くすマリーゴールド


大元のアイデアは「メメント」(クリストファー・ノーラン監督)  「二輪咲き」を見た時に真っ先に思い出したのが「メメント」だった。 本音を言うと「あなた誰」とリコリスが言ったあと「イレギュラー能力者同士の戦い」になるのが第二シーズン的には正解。でも、それってありがちなラノベだし、深夜アニメで有りそうな展開だからなぁ。。。ちなみにラノベ展開のリコリスはアロー光線で立木を焼き尽くすなどの必殺技を持つ(お前こそ誰なんだよ)