メモ 8話。
男子寮でクランの歴史について講義していたファルスが倒れたという連絡が監督生室に入る。病室で「貧血さ」と笑うファルスだが顔色が尋常ではない。紫蘭は人払いを命じファルスを問い詰める「もう、ダメなのか?」「永遠の命か、繭期か。どちらかが僕を追い詰める」「何とかならんのか」「寿命なら仕方ない。僕はもう存分に生きたよ」「貴様がいなくなればウルも無くなる。我々は全員死ぬ」「そうか、そういうことになるのか」ファルスは静かに雨音を聞いている。紫蘭が気がつくとファルスは深い眠りに落ちていた。旅馬車で黒尽くめの少女たちがクランに到着する。ソフィ・アンダーソン様にお目通り願いたいと代表の女・ローズクオーツが言った。奇妙な来客に戸惑うキャメリアたち。来訪者があるとは聞いていない。追い返そうかというキャメリア。ファルスの意識が戻らず追い返して良いものか迷う竜胆。主は不在であると告げる竜胆に、では出なおして参りましょうと答えるローズクオーツ。しかし嵐となり、土砂崩れで街道が埋まってしまったと連絡が入る。男子生徒の一団を連れクランを出て行くキャメリア。街道が通れるようになるまでクランでの滞在を許されるローズクオーツたち。夜。ファルスの傍らにずっと付き添っているリリー。チェリーがやってきて交代するわよというが、今日はここで休むというリリー。監督生室にふらりと現れるスノウ「あの女たちに気をつけなさい」「血の匂いがするわ」顔を見合わせる紫蘭と竜胆。部屋の中でクランの見取り図を広げているローズクオーツ。門の前にバツ印をつけ「外に助けを求めるものがいればここで」「殺してしまって良いのですね?」「他の生徒達は?」「中庭に集合させなさい」「そこで、ひとまとめに」「このクランには外部の者はめったに立ち寄らない」「死体の山が積み重なっていたとしても賊に襲われたくらいにしか思わないはず」「火を放ち、何も痕を残さぬように」「では、今宵」「永遠の命を我等の手に」動き出すローズクオーツたち。紫蘭は不寝番の生徒のもとになにか変わったことがないか尋ねようとする。だが番小屋には誰も居ない。背後から剣を突きつけられる紫蘭。中庭に集められる寝巻き姿の寮生たち。これで全員かと尋ねる安蘭樹。答えない竜胆。剣の柄で殴りつける安蘭樹。おい、乱暴はやめろ!という紫蘭。これで全員かと聞いているのだ、と繰り返す安蘭樹。リリー、チェリー、シルベチカ、スノウがいないことを確認し「全員だ」と答える紫蘭。ファルスの病室に逃げ込んでいるチェリーたち。「なにが目的なのかしらね」と静かに呟くスノウ。ローズクオーツがソフィ・アンダーソンはどこかと紫蘭に尋ねている。お館様はここにはおいでにならないと答える紫蘭「では言い方を変えようか」「ファルスはどこにいる?」「知らん。ここにいなければ、どこにいるかわからん」「全員揃っていると言ったではないか」「男子寮のことまではわからん」外部に助けを求めに行こうとするチェリーとシルベチカ。だが門の前には山査子が立っている。その周囲に血に染まった男子生徒が数名倒れている。中庭。倒れた紫蘭を抱きかかえている竜胆「お前が喋らなくても良い。お前の死体が他の者の口を軽くするであろうからな」と笑顔で話しかけるローズクオーツ。竜胆は「わかりました」と答える「何も話してはならぬ」とそれを制する紫蘭。竜胆は首をふると「お館様の元へご案内いたします」窓から中庭の様子をうかがっているスノウ「門に一人。中庭に二人。こちらに向かってくるのが二人」竜胆の後に続くローツクオーツとチュンベリー「厄介なのがこちらに来るのね」「紫蘭は庭の二人を相手にできるのかしら」リリーはじっとファルスの傍らから動かない「そんなところでじっとしていても彼は守れない」「剣は使えるのでしょう?」冷たくリリーに長剣を手渡すスノウ「あなたは私の何を知っているの?」「あなたの忘れてしまったことをよ」「私が何を忘れているっていうの?あなたのことなんか知らないわ!」「リリー」廊下でいきなり竜胆の喉元に短剣を突きつけるローズクオーツ「そこで隠れている二人」「出てこなければ女をここで殺す」リリーに隠れているように手で示した後、出て行くスノウ「御用をお聞きしましょう」「主は就寝中です」「ではお起こし願いたい」「主は病の床に臥せっております。御用の向きを」ローズクオーツは短剣に力を込める。竜胆の首を伝う一筋の血。スノウは全く動ぜず「主はお会いできる状態にございません故、ご存分に」脅しの通じない相手であることに気づいたローズクオーツは剣を下ろす。監督生室(ファルスの病室の隣室)向き合っているローズクオーツたちとスノウたち「ウルという不死の薬をここで求められると聞いています」「ソフィ・アンダーソン様にその製法をお伺いしたい」戸惑う竜胆「ウルはこのサナトリウムで用いられる繭期のヴァンプのための緩和薬です。おっしゃるような不死の薬などではありません」「私たちが毎日飲むような薬にそのような力があるはずがございません!」チュンベリーが冷たく言った「かわいそうに」「なにも知らされていないのね」「スノウ、あなたはどうなの?」無言のスノウ「相変わらず氷のように冷たい女」「どれほど長く生きられても心はやがて死ぬわチェンベリー」「永遠の命に価値はなかったというの?」「永遠の命に価値があるかどうかは知らない。でも、永遠の命なんかに価値はないのよ」ローズクオーツは苛立だしげに「あなたの価値観を聞きたいんじゃない。私たちヴァンプにはふたたび永遠の命が必要なのよ!」「結局平行線ね。300年前と同じだわ」「苦しいのでしょう?仲間を増やしたいのでしょう?永遠の仲間を」竜胆はその会話に戸惑って。リリーが部屋に入ってきた「あの、ファルスが、話したいって。5人全員と」病室。「やあ、久し振りだね。ローズクオーツ。チュンベリー、みんなも。300年ぶりかな」「ファルス、なぜこんなことに?」「まぁ、僕も、人並みってことかな。少し、自分の寿命って言うものを過信しすぎたようだ」「永遠の命は、喪われてしまうのか?」「そんなもの、夢だったんだよきっと」「我々はどうなるのだ?」「どうにかしてやりたいが、まず自分の体がままならない」「約束が違う!」「僕も読み違いだった」スノウがファルスに他の人たちは出て行ってもらいましょうかと言う「そうだね、ここからは少し突っ込んだ話になるからね」だが促されても部屋を出ていこうとしないリリー。リリーに優しく「この人達は僕の古い友だちなんだ。だから心配しなくてもいいんだよ」と語りかけるファルス。それでもファルスの手を握ったまま動こうとしないリリー「仕方ない、このまま話すか。。。」すっと意識が消え、ファルスに覆いかぶさるリリー。リリーに手をかざしているスノウ「私たちは外に出ているから」リリーはファルスの隣のベッドで寝かされている。病室の外の竜胆とスノウ。あの、と口を開く竜胆「あなたのことを誤解していたわ」「ありがとう」スノウは氷のような横顔で「どうせ明日になればみんなこのことを忘れてしまう」「え?」「なんでもないわひとりごとよ」翌日、早朝にローズクオーツたちは旅だった。入れ違いにキャメリアたちが戻ってくる。病室「僕たちがいない間になにかあったのか?」「門のところに血溜まりがあるようだけど」「それに男子寮の人数が足りない」ファルスはリリーが剥いてくれたリンゴをかじりながら「さあ、気のせいじゃないか?」「僕は昨日は人事不省で一晩ここで横になっていたから、詳しいことはわからないけど」「紫蘭はなんだって?」「大怪我をして頭に包帯を巻いてるよ」「なんで?」「わからないから君に聞いているんだ」ファルスはリリーの顔を見る。リリーの表情には時に何の変化もない。「昨夜は、夢を見ていたよ。懐かしい顔が揃ったんだ。スノウも、竜胆もいた」「帰ってきてくれたのかって思ったけど、起きてみたら誰もいなかった。みんな今頃どうしているだろう」「もう、死んでしまったのかなあ」ファルスはいきなり感情がこみ上げてくるのを感じた。涙が溢れてくる。「あれ?僕、なんで泣いてるんだろう?」「なんでだろう。どうしてこんなに悲しいんだ」「昔の仲間を思い出しただけなのにどうして」言葉が詰まり、ファルスは嗚咽したまま何も言うことができなくなった。リリーは立ち上がると静かにファルスを抱きしめた「だいじょうぶ。なにも起きていない」「だいじょうぶ」「私はここにいるよ」「だいじょうぶ。だいじょうぶ」ファルスは子供のように泣きじゃくる。中庭。スノウは静かに今日もベンチでひとり本を読んでいる。竜胆が通りすがりに会釈する。それだけが小さな変化だった。
キャスト
ローズクオーツ。。。金澤朋子
チュンベリー。。。宮崎由加
安蘭樹(アンランジュ)。。。宮本佳林
山査子(サンザシ)。。。高木紗友希
ガリア。。。植村あかり