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行く先不明のパソコンblog

演劇女子部 ミュージカル「LILIUM-リリウム 少女純潔歌劇-」@森ノ宮ピロティホール(11:30/15:00)

各所でセンセーショナルな反響を巻き起こした「リリウム」いよいよ大千秋楽である。というわけで行きたかったのだけども、直前まで踏ん切りがつかず、オクでもチケットが爆発という状況で七転八倒していのだけども、土壇場で譲っていただける方が現れ(そこまでに2回チケット断られている)当日弾丸ツアーという久々の強行軍で大阪まで行くことになった。弾丸ツアーははっきり言うけど、高い。一泊でパックのツアーにして旅行代理店で新幹線取ってもらうほうが全然安いのだけど、土壇場だから仕方ない。。。大阪だとトータルで6,000円くらい損するのだ。これって、金曜の公演も見れる額じゃないですか。。。はぁ、もっと早く行くこと決めていればなぁ。。。

とはいえ、そんなことも言ってられないので、去年名古屋に弾丸ツアー決行したのと同じ勢いで大阪までイテキタ。奇しくもまたスマイレージ絡みである。あやちょ俺の嫁である。「あなたは嘘を付いているわ」だの「穢れた唇で何を言うの」だの言われに行くのであるぽわわわ~ん。


感想はだいたいツイッターで呟いたので省略するけど、芝居としては東京楽日午前を上回るものではなかった。出来としては大阪午前は東京楽日午前を100点とすると80点くらいな内容。悪くはないが、もっと行けるはずという印象。大千秋楽は巻きの入った内容で一部セリフの省略も含め駆け足の進行。どうするのかと注視していたら、マリーゴールドがマーガレットを噛むところから芝居のリミッター解除。ここからタメも含めて目いっぱいの演技合戦がスタート。とにかく役者がタメるタメる。田村芽実に噛まれた被害者が普段の倍くらいの長さで絶叫する。2時間という公演時間の制限があり、テンポよく芝居を組み立てる必要がありそのために役者の生理よりも若干短めに刈り込んだ芝居を、本来のサイズで演じさせるような仕掛け。ここからラストまではとにかくものすごい出来。芝居が終った後、文字通り万雷の拍手となり、スタンディングで観客が演者をたたえたのだが、ひと通りの挨拶が終った後、和田彩花鞘師里保が再登場。劇伴が流れ始め、最後の芝居がスタート。リリーがOPでファルスが持っていたはずの百合を手にステージに向かい、静かに舞台にそれを置く。そしてスノウとともに舞台奥に消えていき、花にスポットライト当たって残るという演出。まさに大団円。セリフの一切ない芝居だったが、まさに最終回ならではの演出。コレを見れなかった人はリリウムの世界から抜け出ることは出来ないんじゃないだろうか的な、見に行かなきゃ見れなかった芝居であった。


しばらく、イベントとかライブはいいや、と、思ってしまうような良い舞台だった。それは本来、アイドルの舞台としては(あくまでも舞台はアイドルを売るための販促、宣伝という位置づけであろうから)どうかとも思うが、しかし、そういう舞台を見せてくれたハロー!プロジェクトの皆さんに賞賛の念を惜しみません。普通、こんな企画通らない。奇跡の舞台だった。とにかくいいもの見せてもらいました。ありがとう!


雑記

 音楽。。。TRUMPからの流用曲は3曲確認。「TRUE OF VAMP」(劇中歌である「TRUE OF VAMP」の前に流れている曲。スノウがTRUMPの名を口にするところから流れ始める)「ライネス -theme of TRUMP-」(終盤、リリーがイニシアチブによってソフィの自由を奪うところから流れる終局のテーマ)「デリコの兄弟」(前半で記憶を失わないリリーを見た紫蘭が竜胆に不安を告白するシーンの曲) ほかは気が付かなかったけど、もっとあるのかも。 オリジナル曲は編成を変えて(いるように聞こえる)3回流れる「Inner Mercy。。。」とエツ子先生が歌う実質リリウムのテーマと随所に挿入される「幻想幻惑イノセンス」のアレンジが目立つ。さしずめ裏テーマといったところ。リズムのみ使用とか大変形とかあって楽しい。

 演技。。。客演的な安定した演技、歌唱を見せる田村芽実、前作の主人公であり本作のもうひとリの主人公であるファルス/ソフィ・アンダーソンを演じた工藤遥、表面的にはダブル主役として紹介されているが実はバイプレイヤーであるスノウを演じた和田彩花の3人が特筆の出来。3人共多面的な内面を表現しなければならない重要な役どころであり、特に、若手の工藤遥は稽古中のダメ出しの嵐で大変だったという。ダメ出しのメモに「工藤」という文字がズラリと並ぶ日々が続き、稽古場ではそれを工藤祭りとすら呼ぶ始末。それは演出家、末満健一からの最大級の期待であり、それに十二分に応えきった演技を見せてくれた。主演の鞘師里保、キャメリア役の中西香菜、期待の新人小田さくら、そして脇役陣の実質筆頭である石田亜佑美の活躍も光った。特に、中西の演技、歌唱は大抜擢に応える出色の出来。小田さくらとのデュエット曲「あなたを愛した記憶」での中西はメインでの抜擢に見合った素晴らしいものとなった。主演格の工藤と、サブの中西の素晴らしい活躍がこの芝居を成功に導いたと言っても過言ではないだろう。二人の芝居はもっと見たい。これは誰しもが思ったことではないだろうか。

 演出。。。末満演出は小劇場的だったステーシーズとは方向性を変えて「大きめの劇場」での芝居に転じた。ステーシーズは「もっと小さな小屋で見たい」と思わせてくれるアングラ色があったが、リリウムは「もっと大きな劇場で見てみたい」と思う商業演劇色が見どころとなった。これは、外部キャストがいなくなったことも大きく作用していると思うのだが、武道館クラスのパフォーマーであるスマイレージとワンフォーのメンバーのガチンコのパフォーマンス合戦はもっと大きな会場に耐えうるわけで(彼らは2200人が入る中野サンプラザでさえ満席にできる)、その能力を全開にさせた末満演出は素直に評価されて良いと思う。また「余白」を残し、観客に足りないピースを積極的に想像させる末満マジックも健在。ステーシーズでも思ったが筋を知ってから見る2回目以降よりも、1回目の衝撃のほうが大きいという演出はこの演出家の「良心」であると思う。だって、公演を一回しか見ない人のほうが多いわけだから。その上で2回目以降は「筋を知っていても楽しめる」「前作を見ていると更に楽しめる」作りになっておりさすが売れっ子演出家であると思った。

物語。。。断片がばらまかれている上に、秘密を隠すために登場人物が最後まで嘘をつきつづけ、おまけに、公演が進むと芝居の内容まで変わってしまうため、こういうお話だった、ということは語りにくいのが難点だが、劇中で語られていることを素直に解釈すると、



重症の繭期のヴァンプを収容するサナトリウムの責任者になったソフィ・アンダーソンは、そこで自分を不老不死化したTRUMPの力について研究を重ねていた。800年前にリリーとスノウという少女に投与した薬によって、不老を実現させることに成功したソフィだが、今から500年前に実験の失敗を知る。自分が「変わってしまったこと」を知り絶望と共にソフィに詰め寄るリリィ。イニシアチブの力を使ってリリーの記憶を消したソフィはファルスと名を変え、秘密を知るスノウと二人でリリーと共に歩むことを決意する。300年前に仲間に加わった竜胆、紫蘭らと記憶操作と人為的な淘汰を繰り返し、クランを維持してきたソフィだったが、50年前にスノウに対するイニシアチブが効かなくなったことを知る。記憶の戻ったスノウはかつての親友、リリーが自分のことさえ知らない別人になってしまったことを知る。10年前、キャメリアと恋に落ちたシルベチカ(服装から判断すると監督生だがパンフの写真には監督生バッジがない)は、チェリー、リリー、スノウらの協力を得てクランから脱出を図るが失敗、自ら死を選ぶ。やがて、リリーに対するイニシアチブも、キャメリアに対するイニシアチブも薄れ始め、紫蘭はファルスの異変を確信する。シルベチカに関する漠然とした記憶を取り戻したリリーにスノウはTRUMPの存在を示唆し始める。スノウに精神的な限界を感じ彼女を殺そうと考えるファルス。スノウを憎むマリーゴールドが彼女を殺そうと動き出す頃、チェリーたちがシルベチカの秘密に到達し、キャメリアの記憶も元に戻る。ファルスはイニシアチブを使ってすべての騒動をリセットするが、スノウはマリーゴールドの手にかかって死ぬ道を選ぶ。マリーゴールドはファルスによって殺されるが、それを見たリリーは激昂、ソフィの正体を表したファルスの自由を(ヒエラルキー上位の)イニシアチブで奪い、クランの生徒たちを皆殺しにした上で自らも死を選ぶ。だが、リリーは死ねなかった。生き返ったリリーは自分こそがクランに存在するただ一人のTRUMPであり、ファルスやシルベチカ、そしてスノウが遠回しだが確かにそのことを伝えようとしていたことに初めて気づく。500年前の実験でリリーは怪物となってしまっていたのだ。ここは怪物となってしまった少女を永遠に封じ込めるための偽りの花園だった。リリーだけが知らなかった。横たわる友人たちの死体の真ん中で少女の絶叫が響く。


ラスト、様々な登場人物のセリフが流れ、全ては「リリーのために見せた夢だった」「覚めない方がいい夢だった」(おそらく主要人物はリリーの正体を知っていたが優しさゆえに隠し通していた)ことが示されるところがポイント。全部フェイクだった。事実は「リリーこそが怪物だった」ということ。そして、おそらく500年前にはもう怪物になっていたんじゃないかという。リチャード・マシスン「地球最後の男」を彷彿とさせるエンディングである。

展望。。。演出の末満健一氏のTwitterから、事務所側はこの作品にあまり好感を持っていないことが示唆されている。タイトルがわかりにくいから「ヴァンパイガールにしてみたら」と言われた件、感謝祭も再演もないだろうという件など、秋のスマイルファンタジーはあること自体が奇跡というような展開になりつつある。しかし、また、益体もない事務所芝居の世界に2011年組を戻しても意味が無い。そこはもう通過したということでいいのではないか。願わくば、末満組での芝居の継続、もしくは外部演劇への積極的な出演だろう。たしかに、芝居に出ている暇はないのかもしれないが、つんく♂が療養中の今、出るあてもないアルバムを当てにしてツアーを組むくらいなら、当分は芝居路線を突き進んでもいいのじゃないかと思う。それくらいメンアーは魅力的に「役者」をやっていた。アイドルの舞台を超えた、という評価は、メンバーが「役者」芝居をしていたという褒め言葉として受け取って欲しい。特に工藤遥くんは仮面ライダーのオーディションを受けるべき!あやちょはもっともっと難しい役を演じるべき。そして、田村芽実は思い切って東宝ミュージカルのオーディションを受けにいいくべき!明日のエポニーヌは君だ!