バルトークジャズ!
George Braith/Cantaloupe Woman
ジョージ・ブレイスはBLUENOTE史上最もワケの分からないプレイヤーだ。「の一人」ではなくてこの人が一番良くわからん。
聞けばわかるとおりR&B系のひ弱系テナー奏者であるブレイスだが、ハッタリだけは世界一だった。自分が開発したブレイスホーンなる「長靴みたいな」サックスと普通のテナーを二本咥えて同時吹き!しかしそこに音楽的意味は全くないこの恐ろしさ!
Big John Patton/Hot Sauce
このノーテンキなテーマを吹いているのがブレイスである。ブレイスのレパートリーを見ると「ウィリアム・テル序曲」とか「メリーさんのひつじ」とかが堂々と並ぶ。これをこの調子でぷっぷくぷーと吹くのがこの人の売りである。が、この人に言わせるとそれは「バルトークの影響」なのだそうである。人呼んでバルトークジャズ! 嘘に決まってんじゃん!
George Braith/メリーさんのひつじ
BLUENOTEと契約が切れた後、Prestigeに堂々移籍、名作「お笑いソウル」(LAUGHING SOUL)を吹き込むなど大活躍。ついにニューヨークでは吹かせてくれるところがなくなってしまい(当たり前だ!)自分でライブハウスを経営するも倒産。JAZZ衰退とともに歴史の波間にその名は消えていった。
George Braith/Musart
割と硬質なラテンジャズ。これなら文句ない演奏だが、どうしてこの期に及んでよりによってフリーに走ったのか全く不明。。。ここで彼のキャリアは途切れてしまった。。。
だが、時代が一周半した90年代、BLUENOTEが再発され、ブレイスのアルバムも手軽に聴けるようになって、なんど日本にブレイスブームがやってきた!おそらく世界で最初(そして最後)のブレイスブームだった。ブレイスを聴きたい、あのアホな演奏を生で見たい!そんな物好きが日本中に溢れ、ついに日本のレーベルからブレイス捜索隊が出発するに至った。
ブレイスはいた。当たり前のようにいた。彼がいたのはニューヨークの地下鉄駅の構内。そこで、ストリートミュージシャンをやっていた! あああ、名門レーベルに何枚も吹きこみを残してるプレイヤーが今やストリートミュージシャン、しかも、サイドマンはタレンタイン弟こと、トミー・タレンタインだった!タレンタイン兄に弟の話題をふるといつも不機嫌になってしまったと言われる不肖の弟!トミー!おまえもか!
ブレイスを発見した日本のディレクターは彼にリーダーアルバム制作を提案し、日本のパドルホイール(キング)から再起第1弾が発売され、日本ツアーが本当に実現した!誰もが当たり前のように「死んだ」「死んだはず」と言っていたブレイスが、ついに日本の土を踏んだのだ!
George Braith/Jaji
再起したブレイスは活動を再開した。マイナーレーベルながら吹きこみも再開し、このアルバムはなんとサイドがディジー・リース。おっさん、またブルーノート仲間かよ!っていうか、リースもコンガなんか叩いてんじゃねーよ!ペット吹けよ!(リースはれっきとしたコンガ奏者でもあるわけだが)
George Braith Live at Lenox Lounge NYC
これが現在のブレイス。実は今年も日本ツアーをやっていた!おっさん、懲りないというかなんというか。。。聞いた人の話だと「本当にただのジャズだった」とか。この映像を見ても、本気でストレートアヘッドなジャズをやっていて感心するが、それは60年代にやっておくべきだったんじゃぁ。。。。。。。
ちなみに、EXTENSIONとMUSARTは充分「聴ける」アルバムですから、暇なときに是非チェックを。