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行く先不明のパソコンblog

ばくわら 番外編 リリウム そのはち

長いです。ラブラブムードの二人から、真相が明かされる中盤最大の盛り上がりまで一気に駆け抜けます。

・数日後、昼。相変わらず雨が降っている。疲労で動けなくなったリホ。もう無理だ、クランへ戻ろう、というファルス。リホは拒む。だが、限界なのは明らかだった。

・その時、通信機が反応した。声「こちらUTE本部、コールサインをどうぞ?」

・思わず呼びかけるファルス。声「ハル?ハルなの?どうして鞘師さんのチャンネルでコールしてきたの?」

・リホは通信機を受け取ると「UTE本部。こちらコールサインプラズマ、鞘師です!」と告げた。

・無線機の向こう側が何やら騒がしい。それはそうだろう、消息を絶っていたUTE要員からいきなり通信が入ったわけだから。リホはそう思った。宮崎に変わって無線に出たのは吉澤だった。ワンフォーは戦闘行動中だという。

・鞘師はこれまでの情況を報告し、田村が苦境に立っていることを告げた。大至急救援隊を送ってほしいことも。

・そもそも君は今どこにいるんだ?吉澤が言った。二人が行方を断ってからUTEは全力で森の中を捜索した。だが何の手がかりも得られなかった。

・リホは森の多く深くにあるクランと呼ばれる施設にいるという。森からは外にでることが出来ないとも。

・星天観測で緯度経度はわかるだろという吉澤に、クランの森はいつも雨が降っていて星が見えないと答えるリホ。今も雨が降っているんだな?と吉澤。

・宮崎が意外な報告をもたらす。今現在、日本国内で雨の降っている場所はない、と。少なくともそこは日本ではないはずだという吉澤。

・眠っている間に移動させられた可能性があるなという吉澤。その上で、ヴァンパイア伝説も作りごとである可能性が高いと言う。自分の体に変化が見られるんですという鞘師。恐らくそれはなんらかの暗示だろうという吉澤。もしくは、薬物。全て疑ってかかれという吉澤。話を聞いていると君は首元まで敵の術中にハマっている印象を受けるぞと。

・可能であれば単独で森を突破して脱出しろと命じる吉澤。さもなくばなんとかして現在位置を確認して連絡せよと。リホは突破は不可能と報告し、いったんクランに戻り田村を守りながら場所を突き止めると回答した。

・ところで、と吉澤が言った。君は、森の中に調査に入ってから現在までにどのくらい経過したと考えている?と。不思議な謎かけに、リホは3ヶ月弱、くらいでしょうかと答える。

・「3年半だ」吉澤は言った。リホは絶句する。寝て起きて、その回数はカウントしているというリホ。記憶操作か、あるいは睡眠自体を長時間取らされている可能性があるな、と吉澤。一週間に6日眠る人間がいるとすれば、その人間にとって一年はわずか52日で過ぎていく。たぶん、その類だろう。

・通信は次第に途切れ始め、やがて完全に通じなくなった。雨が強く降り始めていた。

・なるほど、この雨に含まれる何らかの物質が通信遮断スクリーンの役割を果たしているのか。。。そう考えるリホ。或いは不可視化スクリーン?

・ファルスが心配そうに覗きこんでいる。「大丈夫かい?今の人、誰?」

・リホはUTE作戦要員の顔でこう答えた「上司よ。さあ、クランへ戻りましょう」ファルスは急に変わったリホの態度に首を傾げている。

・リホは先に立って歩きながら「(彼も敵の一味なのかな)」と考えている。まず、全て疑ってかかるべきだ。リホは改めてそう思いながら、心の中のもう一人の自分が悲鳴を上げていることにも気づいていた。

・「所詮、幸せにはなれない身か」リホはつぶやいた。ファルスは少し離れたところから、リホの背中を見つめていた。

・クランに戻る2人

・ニヤニヤしながら現れるチェリー。無言で額にコンドームの箱を叩きつけるリホ。箱を検分するチェリー。封が切られており中を調べると空。おやおや、お盛んですね。真っ赤になってそっぽを向いているリホ。

・竜胆は、純潔を守ったのでしょうね?と聞き。もちろんです、なんでしたら妊娠検査して頂いても構いませんというリホ。言うことが直接的過ぎて吹き出すチェリー。竜胆はあなた達の首筋を見れば嘘はすぐにバレるのですよ?という。見え見えの態度でシラを切るリホ。

・竜胆はクランの外で行ったことは不問に付すというが、もし、中でふしだらなことをしているのを見つけたらクランを出て行ってもらいますと釘を刺す。ここは繭期の者のためのクランなのです、と。

・キャメリアとシルベチカがリホに「おめでとう」という。なんにもなかったたよ!と答えるリホに「ファルスが四六時中ニヤニヤして授業になってない」というキャメリア。リホは真っ赤になって「あのバカ。。。」と俯く。あらためておめでと言うと言われるリホ、ぎこちなく、ありがとう、と答える。

・リホは田村の部屋に向かうが田村はいない。そもそも空き部屋になっている。

・田村のことを竜胆に尋ねるリホ。そんな者は知らないと答える竜胆。

・田村のことを探し始めるリホだが、痕跡すら残さずに存在が消えている。敵の存在を確信するリホ。

・誰が敵で誰が味方なのか。疑心暗鬼にとらわれるリホ。なんとか位置を調べUTE本部に連絡したい。

・密かに学籍簿を調べるが、マリーゴールドは何年も前に死んでいることがわかる。死因は自殺だった。その時にユウカという少女がクランから別の病院に転院したことも書かれていた。ユウカは事件をきっかけに心を病んでしまった様子だった。その後のことは分からない。学籍簿に転入生としてリリーの名を見つけるリホ。そこにも田村の名前はない。

・チェリーに聞いても、シルベチカに聞いても、田村のことを覚えているものはいなかった。田村をいじめていた生徒たちの誰もがその存在を忘れていた。何者かによる記憶操作を確信するリホ。

・リホは薬をのむのもやめた。すべての生徒たちが敵に見えるようになるリホ。

・リホはファルスにも田村のことを聞くが、彼もまた知らないという。リホとファルスは言い争いになり、彼を拒絶してしまうリホ。寂しそうに「そうかい、わかったよ」と言って去るファルス。

・ベッドの上に横になり、田村のことを想うリホ。めいめい必ず探しだしてみせるからね。そう呟く。

・リホは冷静になってここに来た時からの出来事を整理してみる。だが、記憶の中にある出来事の裏付けができない。記憶操作かと思うが、それにしてもつじつまが合わなすぎることに不安になるリホ。

・ここでリホは、記憶を操作されているのは周囲ではなく、自分なのかもしれないことに気づく。だとすると、何が本当で何が刷り込まれた偽りなのか。

・リホは、ふと思い立ち、いつも生徒たちから距離をおいているアヤカに興味を持つ。自分をユウカと呼び、ユウカをいつまでも探し続けている少女。

・アヤカはリホに冷淡に接する。だってあなたはユウカちゃんじゃないんでしょ?と。友人のことを探しています。名前はマリーゴールド、と。

・アヤカは答えた。マリーゴールドはもういないわ。そのことはあなたが一番良く知っているはずよ、と。意表を突かれるリホ。自分の記憶の欠落を確信するリホだが、紫蘭が現れてアヤカを連れて行ってしまう。もうこれ以上アヤカを苦しめるのはやめろ!吐き捨てるように言う紫蘭

・チェリーが言う。マリーゴールドを探すのはもうやめて。みんながあなたのことを心配しているわ、と。

・ファルスがぎこちなく現れて、ごめん、この間はカッとなってしまった。マリーゴールドのことを探すなら気の済むまで探すといい、僕も手伝うよと言う。

・リホはそんなファルスの態度に悲しくなり、自分で調べるからいいよ、と断る。全部偽りなんだ、きっと。ファルスの私への気持ちも、私のこの気持も、全部。

・夜。監督生室。紫蘭が見つめている一枚の古びた写真。紫蘭と、アヤカ、そしてリホ。なんでお前はまた私たちの前に現れてしまったのだ。そう呟く。竜胆が部屋に入る。紫蘭の見つめる写真を見て、悲しげに言う。どうしてリリーはマリーゴールドのことを探すのかしら、もうあの子はいないのに、と。

・生徒たちの薬を管理しているキャメリアだが、数が多めに合わないことに気づく。誰かが薬を飲んでいないとしか思えない。その報告を聞いてハッとするファルス。リリーか。。。

・リホに薬のことを問い詰めるファルス。そうだよ、もう薬は飲んでいないと答えるリホ。あの薬をのむと心が落ち着いて、このクランには何の不安もないように思えてくる。あの薬はそういう薬なんだね、とリホ。

・繭期のヴァンプにはあの薬が必要なんだ、とファルス。私には必要ないよ、だって私は人間だもの、と答えるリホ。まだそんなこと言ってんのかよ、と吐き捨てるファルス。

・とにかく薬を飲め!と強く言うファルスに、本性を表したね、と答えるリホ。薬を飲ませないと都合が悪いから、そういうんだよね?と冷たく言うリホ。なんで僕のことを信用してくれなくなった?と聞くファルス。

・学籍簿にファルスなんて名前はなかった。悲しく答えるリホ。あなた一体誰なの?

・君それを知ってどうするの?とファルス。タムラメイミを取り戻すのとリホ。タムラメイミなんて最初からいない、全部、君の妄想だと答えるファルス。妄想の中で作り上げた架空の友人なんだ、と。

・地球防衛機構、UTE、リホ・サヤシ、全部君の中の妄想なんだ、そんなもの、最初から存在しない、苦しげに言うファルス。

・「じゃあ、あなたも私の妄想の一部ね、ファルス」「違うよ!僕はここにいいる!」

・「本当のことが知りたいの」「本当のことなんか知ってどうするんだ!」

・「僕は確かにファルスという名前じゃないのかもしれない。でも、君が考えているような本当なんて、このクランにはないんだ!」

・「君が知りたがっているのは君に都合のいい本当だ」

・「他は全部教える。だからマリーゴールドのことは忘れてくれ!」

・リホは言った。最初にこのクランに来た時、わたしのことを噛んだのは、ファルスだよね?

・ファルスは棒立ちになり、リホは続けた。あの夜、イニシアチブを取らせてあげた時に気がついた。前にもこの人に噛まれたことがあるって。とっくにイニシアチブ取られてたんだね、わたし。

・イニシアチブで私の記憶を書き換えたんでしょ、あなた達に都合のいいように。最初、みんなの記憶が書き換えられてるのかと思った。でも違った。みんなはマリーゴールドのことを知っていた。知っているのに知らないふりをしているだけなんだ。私になにか隠している。ファルス、あなたが私の中から、記憶を削ったんだ!

・私は、めいめいと約束したんだ。必ず助けに戻る、必ず迎えに行くって! だから、探さなきゃならない! わかってよファルス!

・「めいめいなんていないんだ。。。でも、それを知ったら君は、きっとまた僕の前からいなくなってしまうんだろ。。。そんなことはもう耐えられない」

・「ファルス、わたしもあなたを噛んでるんだよ」「あの夜、わたしもあなたを噛んだ」「もし本当に私がヴァンプの一員なら」「私もあなたのイニシアチブを掌握してる」「イニシアチブで記憶を戻すように命じることもできる」「でも、そんなことしたくないよ」「私の記憶を返して」

・ファルスはためらい、長く沈黙し続けた。「思い出さないほうがいい真実もある」「どんな残酷な偽りでも偽り続けなければならないこともあるんだ」「君は、真実を知っちゃいけない」「僕のことをどれほど憎んでくれてもいい」「思い出すのだけはやめてくれ!」

・「大丈夫だよ」「私はどんな残酷にも耐える」「人間の世界で」「私の見てきた地獄はね」「ファルスが想像しているよりもはるかに深く、酷い」「記憶を返して」

・「お願いだ」「僕の前から」「消えないでくれ」ファルスはイニシアチブ能力を使った。

・そうだあの日。雨の中庭で、ずぶ濡れになっためいめいが泣いていた。私は、虐めにあった彼女を守ってあげられなかった。助ける勇気がなかった。それで、謝ろうと思ったんだ。すぐに部屋の前まで行った。呼びかけても返事がなかった。それで、夕食の時に謝ろうと思って

・けれど、めいめいは食堂にも現れなかった。竜胆たちに向かって、ファルスがめいめいのことで怒ってくれている。凄く、うれしかった。

・私は、食事を持って、めいめいの部屋ドアをノックした。けれど、返事がなかった。鍵はかかっていなかった。私はドアを開けた。真っ暗の部屋なかで灯もつけずにうずくまっているめいめいが見えた。

・「めいめい、ごめんね」「わたし、めいめいのこと傷つけるつもりじゃなかったんだ」「なんであんな事言ったのか自分でもわからない」「でも、本当のことをわかってもらおうと思って」「灯、つけてもいいかな」

・私はスイッチを入れた。目の前の景色が真っ赤に変わった。

・「血だまりの真ん中で、めいめいが死んでいた」「ナイフで喉を切って、吹き出した血で部屋の壁が真っ赤になっていた」「私の足元まで」「床は一面の血で染まっていた」

・寮の別室。リホの悲鳴が聞こえる。飛び出していく生徒たち。部屋に飛び込むチェリー。

・生徒たちは呆然と立ち尽くしている。自殺した少女の傍らで、リホが絶叫し続けている。名前を呼ぶでなく、詫びるでなく、ただ叫び続けている。気が、ふれていた。

・現実。崩れ落ちるリホ。そのままうずくまり震えている。ファルスは、何も言わない。

・「めいめいは、死んだんだ」「あの日、死んだんだ」「私、気が変になってしまって、忘れてしまっていた」「私が、めいめいを死なせたんだ!」

・君はリリー、リリー・アンダーソン。ダンピールにも別け隔てなく接することのできる博愛主義者。マリーゴールドは君の親友。マリーゴールドは、虐めにあった自分を助けてくれなかった君の姿に絶望して、あの日、命を断った。それを目の当たりにした君は壊れてしまった。

・君は、外の世界の病院で治療を受けることになった。ヴァンプの世界では君は治しようがなかった。君は協定によって人間の世界に送られそこで治療を受けることになった。君は、リリーであることをやめてしまい、リホ・サヤシという架空の自分を作った。超人機構、ワンフォー、全部君が治療の過程で作り上げた妄想だった。

・治療を終えた君は、このクランに戻ってきた。タムラメイミという、僕達には見えない友人を連れて。

・全部君の作り上げた世界。全部君の作り上げた妄想。君は森のなかで壊れたおもちゃのトランシーバーを外の世界につながる無線機だと言い張った。君は返事をしない無線機と会話を交わした。

・君は、超人であるはずなのに、僕より先の森のなかで動けなくなった。君は、人間であるはずなのにイニシアチブの影響を受けた。君は、人間であるはずなのに僕を噛んだ。ヴァンプでないはずの君は、僕のイニシアチブを掌握した。そのことに、君は何の疑問も覚えない。

・僕には協力者が3人いた。君の親友だったチェリー、監督生のキャメリア、キャメリアの彼女のシルベチカ。僕は彼らに口裏を合わせてもらった。君の言っていることは全部肯定した。君の妄想は全部受け入れてもらった。僕は君を噛んで、マリーゴールドの事を忘れさせた。だけど君は何度やってもタムラメイミのことを思い出してしまう。いや、作り出してしまう。その度に、僕は君の中からタムラメイミの記憶を削っていった。でも、君は忘れなかった!

・君はマリーゴールドの自殺した部屋に入っていき、タムラメイミを探し始めた。タムラメイミなんで最初から存在しない。僕達の嘘は、ゆっくりと壊れていった。君に壊されていった。

・そうだ。僕が記憶を削ったんだ。君を二度失うのが怖かったから。。。

・「嘘だ」「嘘じゃない」「嘘だ全部嘘だ」「嘘じゃない」「嘘だ!」

・「これも全部イニシアチブで見せた架空の記憶なんだ!」リホは、いや、リリーは、絶叫した。

・「嘘だ」「嘘だ」「嘘だ」「嘘だ」「嘘だ」「嘘だ」「嘘だ」「嘘だ」「嘘だ」「嘘だ」「嘘だ」「嘘だ」「嘘だ」「嘘だ」「嘘だ」「嘘だ」「嘘だ」「嘘だ」「嘘だっ!」

・リホは、田村の名を叫びながら寮の中を探し始めた。教室を、中庭を、食堂を。記憶の中の田村の姿を探し求めた。もう誰も使っていない田村の部屋を。

・リホは隠していた通信機を取り出すと、UTE本部に向けて呼びかけを始めた。だが、何の応答もない。

・騒ぎを聞きつけて生徒たちが集まってきた。ヴァンプの群れに囲まれたリホは恐慌状態になり、銃を構えて絶叫する。おもちゃの、ピストルだった。おもちゃの、トランシーバーだった。

・もういい、もうやめて。チェリーが立っていた。涙を流していた。リホは叫びながら部屋を飛び出した。

・リホは閂の降りた門に行く手を阻まれると、両手で門を叩きながら叫び続けた。ここから出して!私を元の世界に帰して!ここを開けて!開けて!と。リホは叫び続けた。

・気が付くとベッドの上だった。夜になっていた。自分の手を誰かが握っている。ファルスだった。ファルスはリホの手を握ったまま、ベッドにより掛かるように眠ってしまっていた。昼間起きたことは、夢じゃなかったんだな、と、そこでようやく理解した。

・これからどうしよう、どうすればいんんだろう。

・私は一体、誰なんだろう。ねえ、ファルス、教えてよ。私はいったい、誰なの?

・ファルスが目を覚ました。リホが優しく髪をなでている。

・ファルス、ごめんね。ありがとう。

・そうか、めいめいは死んでたんだ。。。私すっかり忘れていたよ。。。

・でもね、ファルス。消えなかったよ。

・私のファルスへの気持ち。消えなかったよ。本当のことを知っても。消えなかった。

・僕はずっとここにいるよ。だからもうお休み。リホは深い眠りに落ちて行く。

ファルスがイニシアチブ能力を使ってリホの「リリーだった頃」の記憶を復活させ、なぜ記憶削除が行われたかを思い出させてしまうシーンに流れるのは「黒猫がもたらす真実」変拍子に載って奏でられる「本当」のテーマ。「ここに君の考えているような本当はない」と言い切る理由が明らかになり、リリーが絶叫する中盤の見せ場がここに。