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行く先不明のパソコンblog

違和感

先日のksykの告白の正体は「違和感」なんじゃないかと思う。

同じ違和感を先に吐露した人物がいる。西脇綾香その人だ。あ~ちゃんこと西脇綾香は2009年の半ばでそこまでの路線にブレーキを掛け、減速してもらったとかつてインタビューで語った。その前年、2008年の殺人的スケジュールは1日にコメント録り80本という数字で語られるが、その時の3人の感想は「歌手の人ってこんなに忙しいんだ」という素直な驚きだった。だか僅か一年で驚きは違和感に変わる。その違和感を西脇さんは「手応えがない」と表現した。それはそうだろう。仕事が殺人的に増え、メディア露出が加速度的に増加しているにも関わらず、それが数字に反映されている気配がない。シングルも横ばい、動員も頭打ち、フェスに出てもあれだけマスコミ経由で投下したはずの新曲に対する観客の反応のどうしようもない鈍さ。

あきらかに、この「忙しさ」が自分たちのための忙しさではないように、西脇さんの中で感じられたのではないだろうか。

2009年は駆け足ではなく歩くようなペースにしたいと思っていたと、ラジオ番組で西脇さんは述懐したが、実際にはアルバム発売までその「スタッフだけが満足する」繁忙期は続き、年の半ばにさしかかる頃やっと歯止めをかけることができた。スタッフが何かを反省したわけではなく「Perfumeの側からお願いしてブレーキをかけさせてもらった」と西脇さんはインタビューではっきりと述べている。地獄への道は善意で敷き詰められている、とはよく言うが、Perfumeはあえてその善意を否定してまで路線の転換を主張した。恐らくその根底にあったものはなにかの確固たる確信とかそういうものではなく、単純な違和感だったのではないかと思う。


翻ってksykの感じた違和感の正体は、ライブの中でミスがあったとかなかったとかではなくもっと根元的な部分、ドームライブの内容そのものに納得がいっていない、こういうライブでよかったのだろうかという「疑念」が最初から最後まで抜けなかったところから生じた「違和感」だったのではないだろうか。恐らくksykはライブで観客席が沸騰する度にたまらない違和感を抱いていたのかもしれない。その根底にある「理想のドーム公演」がどんなものであったのかはよくわからないが「よかった、感動したと言われることがたまらなく苦痛だった」というのは、結局、あのライブは本意ではなかったということに尽きるのではないだろうか。いったい、ksykはいつ頃からあのドーム公演はPerfume(あるいはksyk個人の)の本意ではないと感じるようになっていたのだろう。



ここから先は個人的な感想になるが、かなり早い段階でこの違和感は生じはじめ、しかしドームライブそのものがPerfume発の企画であるが故にブレーキを掛けることが出来なかったのではないだろうか。


しかし、ksykの吐露したこの違和感、ラジオを聞く限り3人の共通認識であったように思えてならない。多くの人が指摘する大本彩乃のドーム評「成功だったとここでは言いますが」が端的にそれを示す。だが、現実にドームは満員になり、マスコミもネットも「成功」と言う。興行は客を満足させることが出来るならそれで成功だろう。だから「あれはあれで成功」と大本は言うが、ksykには全くそういう感想がなかったという。


はっきり言えばこれはちゃぶ台返しであり、スタッフと、そして観客に対する裏切り行為と受け取られても仕方ないレベルの告白だった。

喜んでいるところ悪いんだけど、あたしぜんぜんうれしくないんだ。ごめんね。

5万人の観客に対する冷や水。数百人のスタッフの成果の否定。この告白にはそう取られてもやむを得ないほどの「意味」が込められていた。それがわからないほどksykは間抜けな人物ではないし、ポロッとそういうことを言ってしまいそうな相棒は今回かなり賢く立ち振る舞った。そして、いつもならこの種の違和感を口にせずにはいられないチームリーダーはこの権に関しては頑なに感謝の言葉以外を封印した。大人としてはそれが正しいのだろう。東京ドームを望んだのは自分自身であり失敗も成功も全て己に帰結する。敗軍の将が兵を語らないように、東京ドーム公演の企画者である西脇綾香自身は成功も失敗も含めて語る立場にない。だから、感謝する以外のあらゆるコメントを彼女は封印した。だが、ksykにはそれすら違うように感じられたのではないだろうか。


ksykは「謝りたい」と言ったが、本当のところは「違う」と、ただ「違う」と言いたかったのではないかと思えてならない。その違和感の根元がなんであるのかはわからないが「ドーム公演の成功」という内外の評価が「事実として」固定されることすら否定したかったほど強い「違和感」の表出は恐らく来年度以降のPerfumeを劇的に変化させる原動力となるに違いない。