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行く先不明のlinux blog

MORE! MORE! MORE!/capsule(contemode)

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Perfumeの楽曲プロデュースを一手に引き受ける中田ヤスタカ率いるエレクトロユニット「capsule」の最新アルバム。。。なんてこたぁこのblogを読んでる人は百も承知だわな。つべこべ言わずにレビュー開始。

とりあえず、頭5曲と後半5曲で分割できる構造になっているみたい。アナログ対応ですかね。個人的には前半5曲がお勧め。つーか、後半5曲の意味が今ひとつわからん。



後半の曲は実験性重視なのかフロア対応なのかよくわからんけど、非常に小さなアイデアが1つあって、それを延々と繰り返しているだけという印象を受ける。テクノにおけるアンビエント性やミニマル性と言う戦略は「繰り返すことで小さなアイデアが大きな意味を持つ」という性質を持つが、このB面にまとめられた曲は「繰り返してはいるけど意味は生まれていない」=「要求尺が先にあって」「それに併せて身の丈に合わないアイデアをただ伸ばしている」という負の印象を受ける曲が多い。たった5曲なのに多いも少ないもないもんだけど「ここで終わりかな?と思って時計を見るとあとまだ2分もあってびっくりした挙句、特に何のアイデアの追加もなくリフレインで終わった」(adventure)とか、特に変化のない同じ構造の繰り返しで曲が進んで尺終わりが来たので終わる(E.D.I.T.)とか、あえて言えば実験色だし、さらに言えば「先んじてrmxかよ」みたいな印象の曲が並んでいる。前半が前作をさらに展開した絢爛豪華なエレクトロサウンドであるのに対して、後半を意図して「製作意図不明の長尺曲」で埋めてきたystkの戦略が今ひとつわからなかった。おそらくここいらへんは次作で明らかになるのだろう。


で、前半


M1.ystk曰く「J-POPリスナーをふるい落とすためのイントロw」と言う事ながらA面全体に横溢する「妙なズンどこリズム」を提示する重要トラック。リズムの変容も楽しくあっという間に終わる良曲。M2.先行公開されたキラーチューン。ズンドコドコドコというフロアタムのフックも凄いが、2'10辺りから始まるモダンジャズ色の強いコード進行がまたたまらない。J-POP的な「実体」が一切なくこの4'13の曲全体が「実体」であるという作曲家ystkの力強い主張に溢れた傑作。M3.スクラッチを模したノイズから始まるラップチューン。歌詞から察するに「オバマブーム」に乗っかった一曲?w 中間でいきなりM2と同じ音形が出てきたり、なんとなく次トラックを思わせるBeep音が聞こえてきたりと聞き飽きない仕掛けを持った良曲。だいたい半分で全体の材料を出し切ったあと、それらの異種組み合わせが次々に現われては消える後半部にも注目。M4.アルバムのリード曲。唸る重低音に乗って「あんたがたどこさ」としか形容のできない和律動で躍動するボーカルがたまらないこれまた傑出した(としか言いようのない)6分56秒間。とにかくあの手この手で聞き手を飽きさせないアイデアの洪水。無論PVにおける「ねじりんystk」「千手ystk」のアホアホしさも必見の出来!M5.「鬼さんこちら手の鳴る方へ」としか表現できない音形の上に(懐かしの)ニューウエイブ調ボーカルが載るA面ラストを飾る小品。いい曲。

てな具合に、まったく後半とは性格が異なる内容になっていて驚いてしまう。実際はM7の頭40秒くらいまではA面の雰囲気が残っていて「いい感じ」なのだけど、そのあと続くリズムから違和感が出てきて、主メロの入る頃には前半に感じたワクワク感が失せていることに気づく。これはいったいなんなんだろう。悪くないトラック群なんだけど明らかにA面に負けている。ここがわかんない。本当にわかんない。


噂によるとystkは今物凄い勢いでMiles(おそらく電化Milesだろう)を聞き込んでいるそうだけど、このアルバムから感じるのはA面は「Jack Johnson」B面は「On The Corner」っつーような感触で、普通に聴いて気持ちいいのはA面じゃないのかと思う。しかし、電化MilesはA面のような傾向からB面方向に変容して行った事を思い起こすと油断は出来ない(誰と戦ってるんだよw)と考える。

そういった意味からcapsuleの変容を捉えた1枚となるのかならないのかに注目してみたい。本作の本当の価値は次回作の発売を持って固まる。そういうことで一つ。