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お年玉だよ!例のアレ

19話 月下美人(前編)

19話 月下美人(前編)

森の中。旅人らしき男が道に迷って途方に暮れている。その視線の先に雨宿りしているらしい女の姿を認めて近づいていく「ここはいったいどこなんだい?」「ここはクランの森よ」女はローズだった。商売女のような派手な化粧と挑発的なドレス。「ねえ、天国に行きたくない?」長いスカートをたくし上げていくローズ。その中から匂い立つむせ返るような香り。男は思わず生唾を飲み込む。ローズは甘く笑うと、両脚を左右に大きく開いた。ローズの足元に膝まづき、蜜の滴る根元にむしゃぶりつく男。ローズが男の頭を抱いて更にその奥に舌を導いていく。ローズは恍惚としたような表情を浮かべると、背後の隠し持ったナイフに手を伸ばす。

「じゃあ、約束通り行かせてあげる」満面の笑みでナイフを振り下ろすローズ。

紫蘭が「外」から戻る。警察の調べでオダマキが銃を通販で入手したのはテキサスの銃砲店であることがわかったと話す紫蘭。偽名と他人の社会保障番号をつかってオーサライズしたらしい。そんな情報を外の世界から隔離されたクラン生が持つはずがなく、クランに外部のヴァンプ、あるいは人間が入り込んでいる可能性が高いという。外部のヴァンプなら心あたりがあるわよとスノウ。あんなお調子者じゃなくて敵意のある存在だと紫蘭マリーゴールドのことが随分気に入ったのねというスノウ。

そのマリーゴールドとカトレアがずぶ濡れになって戻ってくる。廊下から部屋までびしょびしょにしたカトレアたちにカンカンになって怒る紫蘭。カトレアは外の話を聞きたいと紫蘭に言う。カトレアはオダマキの使いで外に出て以来、外の世界に夢中になっているとマリーゴールド。特にあのテレビとか言う箱が気に入ったわというカトレア。外で見たことは他言無用だよと釘を刺す紫蘭。外の世界は繭期が終わってからゆっくり味わいなさいとスノウ。そういえばここに来る途中の街道に「外」の連中が入り込んでいたと話すマリーゴールド。心臓を繰り抜かれて死んでいた男の話をするカトレア。ここは先日の一件で有名になった、しばらくするとまた誰かやってくるだろうと紫蘭。厄介なことになったわね、首をふるスノウ。この森はあくまでも財団の私有地だから彼らも勝手には入ってこないとは思いますけどねとマリーゴールド。財団ってなに?とカトレア。

「ソフィ・アンダーソン財団」答えるマリーゴールド。咳払いしてその話題を止める紫蘭

カトレアが退出したあと「外の世界はカトレアには少し刺激が強すぎたみたいね」と話すスノウ。かわいそうだけど記憶を消すしかないかもしれないねという紫蘭。あなた達は相変わらず血も涙もない生き様なんですねとマリーゴールド。そもそもこのクランにお前が余計な外のあれこれを持ち込むのがいけないんだよ!と説教する紫蘭。スノウは仏頂面のまま監督生室を出て行く。

「機嫌が悪そうですね?」「ローズさ。オダマキが死んでからヤケになったようにカラダを売ってる。多分、クランの男子生徒全員とアレはやってるね」「それでスノウさんが?」「あの子もアレで潔癖症なところがあるからね」「なんとも辛い話ですね」

2人は並んですり鉢でファルスのための食事を磨り潰していく。苦しげな表情で眠ったままのファルス。

ローズがホールの壁に寄りかかったまま男子生徒を誘っている。商売女のようなドレス。眉をひそめて囁き合っている女生徒たち。そこに入って来るスノウ。スノウを見たローズは部屋から出ていこうとするが呼び止めて咎めるスノウ「あたしが何をしたっていうのさ?」平然と開き直るローズ。「具体的に言ってご覧よ。みんなの前でさ!」下級生のいる場で言葉を濁すスノウ。

「純潔の誓いだかなんだか知らないけどさ、あんただって守ってなかったじゃないか!」軽蔑したような目でスノウを責めるローズ。下級生がえ?と言う目でスノウを見る。

「私たちは、純潔の誓いを守りながらお館様に交際の許可を求め、互いに永遠の伴侶となるべく清廉潔白な交流に努めていました」「嘘つくなよアバズレ!あんた、あいつとやることやってたじゃないか!みんな知ってるんだよ?いまさら聖人君子みたいな顔するんじゃないよ!」「そんな事実はありません」

ローズはスノウのスカートに手を突っ込むと「ここがお暇すぎて自分が男とやってたことも忘れちゃったのかい?」「一発いくらであいつに股を開いたんだいアンタ?」

スノウはその言葉に激昂してローズの頬を平手打ちを食らわせた。真っ赤な顔でローズを睨みつけているスノウ。ローズは「やったね」とつぶやくとスノウに掴みかかった。下級生たちが悲鳴を上げる中、2人の取っ組み合いが始まった。

紫蘭マリーゴールドがヒマワリに先導されてホールにやってくる。上級生たちに羽交い締めにされてなお睨み合っているローズとスノウ。お互いをアバズレ!売女!と罵る2人。

ローズに部屋に戻って謹慎するよう命じ、ホールから退出させる紫蘭。出て行くローズの背中に「逃げるのかよっ!牝豚!てめぇ、言いたいことだけ言ってふざけんじゃないよ!」と叫ぶスノウ。紫蘭はスノウに平手打ちを食らわせてから、頭を冷やせ!とだけ言ってホールを出て行く。マリーゴールドは「私にお手伝いできることは?」と言うが「ないよ。あの子の食事の手伝いをしておくれ。まったく、せっかくの団欒がおじゃんになったね」そう言って去っていく紫蘭

スノウはホールの床に座り込むと声を上げて泣き出した。子供のような泣き声。スノウはずっと泣いていた。

ローズの部屋。オダマキと一緒の写真が飾られている。「こんなんじゃ済まない。絶対に済まさない。オダマキ、あんたのカタキは絶対あたしが討つからね」「あいつらみんな破滅させてやる」そう呟くローズ。

「スノウも人買いに引き取ってもらうのはどうかしら」リコリスが部屋の片隅でティーカップを片手に微笑んでいる。「あんたは?」「リコリス。TRMUPの使いといえばわかってもらえるのかしら?」「もうTRUMPはあたしにはいらない。永遠の命をあげたい奴はいなくなった」「それでもあなたはTRUMPに純潔を捧げたのだから、これからの永遠はすべてTRUMP様のためにあるのよ?」「そのTRMUPはいつ来るの?」「願いはいつか叶うわ。でもそのためには生け贄が必要よ」「私には人なんか殺せないよ!」「大丈夫。月が昇れば、あの子が目を覚ます。あの子があなたに変わって全てやってくれるのよローズ」ドアがノックされる。

入ってくるシルベチカ。今、誰かと話していた? 部屋の中で髪を梳いているローズ。部屋の中にはローズしかいなかった。首をひねるシルベチカ。何か用かい?ローズが聞く。

リコリスがいないのよ」「リコリスを見なかった?」ローズはそんな子は知らないと答えた。

巡回中のスノウ。男子生徒がモーションをかけてくる。無視して行こうとするが、腕を掴まれて「無視すんなよ」と凄まれる。スノウは難なく腕を振りほどくと逆に捻り上げて床に押さえつける。

「待って、待ってくれ、ローズがアンタを誘えばヤラせてくれるって言ったから!」と悲鳴を上げる男。目の色を変えるスノウ。廊下の向こうをマーガレットの一派が歩いて行くが、何を言うわけでもなく軽蔑に満ちた目で笑っている。カトレアが厳しい表情で監督室で紫蘭が呼んでると伝えに来た。

「くだらない噂だということは知っている」「でもこれも監督生の努めだからね」苦々しげな顔でスノウに質問する紫蘭。「アンタが一回いくらで男子生徒と仲良くすると言っている者がいる。事実かい?」「ローズね」「誰が言っているかは重要じゃない。事実かどうかだけ」「そんなこと私がするわけないでしょう!?」「ならいい。今の質問は忘れておくれ」「ローズのことは私が解決するわ」「ローズが言ってるんじゃない。早とちりはおやめ」「じゃあ誰が!」

「ヒマワリ、ピーアニー、チャイブ、カンナ、ペチュニアモンステラクレマチス、ジャスミン、ナスターシャム、マーガレット、」「もういいわ、やめて!」「お前、噂の中ではもう事実として男子に股を開いてることになってる。ちょっと、これから下級生とはギクシャクするかもしれないね」「こんな、ひどい。。。」唇を噛むスノウ。

「でも、そんなことは口にもしない連中もいるよ」「誰?」「カトレアとマリーゴールド」「あまりうれしくないメンツだわ」「昔のように味方が1人もいなくなるよりはいいだろ。またベンチに腰掛けて誰かが話しかけてくれるのをずっと待つことはない。お前には仲間がいる。頼りなくても仲間をお信じ」

「私、味方なんて1人もいらないかった」「あの人が生きていてさえくれたらそれでよかったの」スノウは寂しくそう言った。「でも、もう死んでしまったじゃないか」紫蘭が言った。

マリーゴールドが下級生相手に月の満ち欠けと潮の満ち引きについて講義している。クランでは月が見えないのにこんな講義をしても無駄だというマリーゴールド。繭期が終わって外の世界に出た時に、こいつみたいなオツムじゃ困るだろとカトレアを指差す紫蘭。カトレアさんは叩いても綺麗に鳴らないスイカみたいな存在ですからねと言うマリーゴールド。カトレアはバカにされていることはわかるが例えの意味がわからない。

「スイカってなに?」「そこからですか」黙ったままファルスの口にすり潰した食べ物を含ませているスノウ。ファルスがむせて食べたものを吐き出してしまうがスノウは無言でそれを拭き、また根気よく食事を与える。それを見ながら「そういえば、リリーどうしているかしら」というカトレア。部屋の空気が一気に重くなる。

夜。男子生徒がトイレに立つ。男子便所の入り口に立っているローズ。胸を強調したドレス。気だるそうな顔。「ねえ、眠れないんだ。少し、付き合ってくんない?」生唾を飲み込む男。むしゃぶりつこうとするが「ここじゃダメ。スノウが目をつけてるからね」と押しとどめ、門を開けると手を繋いでクランの外に出ていく。

翌日。キャメリアが男子の人数がひとり足りないと申告する。部屋にもおらず、点呼にも現れない。誰に聞いても朝から見かけたものがいない。スノウがローズに近づいて「あなた、何か知らない?」と言う。ローズは「知らないよ。あたしは謹慎中だからね。あんたこそなにか知ってんじゃないの?」と答える。クスクス笑う女生徒たち。スノウはいたたまれなくなりその場から逃げるように去っていく。

紫蘭のデスク。引き出しを開けて受話器を取り上げると、テレタイプに回線をつなげるよう交換手に依頼する紫蘭。古びたタイプライターが動き出し文字を吐きだしていく。その一枚に目を通した紫蘭が顔をこわばらせる。

「クランの森で心臓を繰り抜かれた男の死体が見つかった」「着ている服から見て、クラン生だろうと」

地図にピンを刺すマリーゴールド。クランの位置を示すマッチ箱に突き立てる。