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Talkin’ about !!!!!!!!!!!!!

不毛の音楽/アイドルblog

例のアレ

16話 みんな大っ嫌い

16話 みんな大っ嫌い

およそ800年前。ソフィ・アンダーソンという男が、森の奥深くにサナトリウムクランを設立した。彼のもたらした秘薬「ウル」によって重篤な繭期の症状を持つ若きヴァンプたちは穏やかに健やかに繭期の終りを迎えることができるようになったとされる。だが、ウルの製法は門外不出とされ、また、ソフィ・アンダーソンがどこから来たのか、また何処へ去ったのか、それは謎のまま現在に至っている。

マリーゴールドはクランでの長期の滞在を許され、ファルスの病室に立ち入ることも認められた。ファルスの看病を続ける紫蘭のもとで「尋問」を続けるマリーゴールド紫蘭はのらりくらりと質問をかわし続ける。

「息子さん、いえ、ファルスさんは本当に不死の存在なのですか?」「そんな都合のいい存在だとしたら、どうして死にかけているんだい?」「ファルスさんが不老不死になった理由は、あなたが3000年生き続けている理由と同じではないのですか?」「言っておくが、私が3000年生きていると言っているのはお前さんで、私じゃない」「でも、生きてらっしゃるのでしょう?ハリエットさん」「私の名前は紫蘭。ハリエットという女の名前は聞いたこともないね」「食えない人ですねあなたは」「お前さんが、3000年生きるとか、不老不死とか、そういう飛躍した物の考え方を捨てれば、真実は見えてくるんじゃないかね」

「聞き方を変えます。ファルスさんは、なぜ自分が不老不死だと思うようになったのですか」「お前、怒るよこの話を聞いたら」「怒りませんから知っている限りを話してください」「TRUMPさ」「は?」「息子は、TRUMPに噛まれて、不老不死のチカラを手に入れたと言っていたよ」「言うに事欠いてTRUMPですか…いい加減にしてください!」「ほら怒った。でも、この子が言っていたことだからね」「TRUMPなんて存在しない!伝説やおとぎ話の人物だ!」「あたしもそう思う。男の子というのはつくづくバカだねぇ。。。」「今日はもういいです」

「あなた達が守っているクランの秘密というのはなんですか」「ウルさ」「800年も前の薬だ。そんなものよりもっといい薬は今ではたくさんありますよ」「でも、ウルを欲しがる輩は今でも後を絶たない。あたしたちは代々の監督生が秘密の誓いとともにウルの製法を引き継いで、その秘密を守ってきたわけだよ」「ウルの製法の大元は、クラナッハ博士の研究に基づくと考えていいわけですね?」「クラナッハは博士じゃないと言ったろう。もう忘れたのかい」「ああ、学会を追放されてという下りですね。3000年も前の人物ですから、記録も不正確なんですよ」「あの人が作っていたのは永遠に枯れない花さ。繭期のヴァンプの治療薬じゃない」「だが、あなたはその研究のおかげで、永遠の命を得た。違いますか?」「お前さん妄想がひどすぎるね」「ウルが効かなくなった理由を教えて下さい」「いいかい、永遠に枯れない花を作るために必要なのは、TRUMPの血なんだよ」「ほほう。興味深い」「ウルの原料にはそんなものは使っていない。せいぜい、監督生の血を混ぜて特殊な血清剤を作ってとか、そんなものさ」「2つは別物であると」「そうさ」「どうやってTRUMPの血をを手に入れるんです?」「聞きたいかい?」「後学のために」「本人の弱みを握ってね、血を渡さないとどうなるかわかってるのか!って脅かすと、それだけはご勘弁をって言ってわざわざ血をくれにやってきてくれたのさ当時は」「ふざけないでくださいよ」「ふざけちゃいないさ」「TRUMPは全てのVAMP始まりにしてヒエラルキーの頂点に立つ不滅の存在なんですよ?なんでヒモに小遣いをせびられるホステスみたいに血をくれに来なきゃならないんですか、ネヴラ村なんていう田舎くんだりまで!」「田舎とは失礼な」「田舎ですよ田舎、ど田舎でしょネヴラ村は!」

「あなたたちは別に2人で枯れない花の研究をなさってたわけじゃなかった」「よく調べたね。それは報告書には載っていなかったはずだよ」「中央のクランの理科教師、ティーチャークラウスですか、そういう人物が関わっていたと」「そいつがTRUMPさ」「またTRUMPですか」「クラナッハはクラウスを脅迫して研究に必要な血と小遣いをせびっていたのさ。そういうところは、まぁ、もう少しなんとかならなかったのかとあたしも思う」「なんで働かなかったんですか旦那さんは」「せびれば小遣いをもらえたからじゃないだろうか」「よく結婚する気になりましたねそんな男と」「結婚はしてないよあたしたちは」「でもお子さんをもうけられたられた」「男と女の仲なんてそんなもんさ」「私がクラウスさんをTRUMPじゃないという根拠はですね」「TRUMPなんだよ」「この方亡くなっている」「え?」「ネヴラ村事件から14年ほど経ってから、この方の勤めていたクランで火事があったようで、その時に、生徒さんと一緒にお亡くなりになられている」「よくよく火事に縁のある男だったんだねぇ」「私は、この火事は放火だと思ってます」「なぜ?」「証拠がないのでただの推理になってしまいますが、よろしい?」「いいよ。聞こうか」


「この火災は、生徒の多くを巻き込む大火だったのですが、犠牲者のうち3人が、実はネヴラ村事件の関係者でした」「ネヴラ村の村人はTRUMPの怒りに触れてひとり残らず死んだよ。3人も集まるものかい」「最後の3人です」「誰と、誰だい」「1人は研究所の火災から難を逃れたティーチャークラウス。ふたり目は、あなたの息子であるソフィさん。最後はあなたの弟、ノームさん」「ノームがソフィと同じクランに通っていたなんて話はは聞いていない。そもそもノームとソフィは10も歳が離れているんだよ、20代半ばの男が同じクランにいるっていうのは変じゃないかい?」「ソフィさんも、弟さんも、好きでそのクランに入ったんじゃない」「どういう意味だい」「ソフィさんは繭期になってたまたまそのクランに送られてくるわけです。弟さんは、ブラド機関の任務で、たまたまクランに派遣されていた。そして、たまたま3人を巻き込む火災が起きる」「弟がブラドのメンバーだなんて有り得ない!」「なぜ?」「それは、あの子は争いとかそういうことは」「人間だからですよね」「。。。」「当時、ヴラド機関は人間のギルドと協定を結んでメンバーの提供なんかをしていたらしいです。それで、なぜだか弟さんにクラン勤務の辞令が降りた」「どんな任務だったんだい?」「誰かの護衛だったそうですが、おそらくソフィさん」「なぜ?」「それは永遠に枯れない花を作ったクラナッハ博士の息子さんだったからですよ」「花は完成しなかったんだよ?」「クラウスの手元ではどうでしょう?」「クラウスが研究を続けたと?」「可能性としてはあるでしょう。彼も研究所のメンバーだ」「なぜそこにソフィが」「まとめておけば、管理しやすかった、からですかね」「火災になった理由は?」「永遠に枯れない花の秘密を、永遠に葬るためだったとしたら?」「生き残りは皆殺し?」「そう考えるのが一番納得の行く説明ですよね」「誰に?」「血盟議会」「なぜ!」「永遠の命がもたらすものは、新たなる血の戦争だったからじゃないでしょうか」「血の戦争こそ伝説じゃないか!」「当時、永遠に枯れない花はそれくらい恐ろしい研究だったんだと思いますよ」


「このクランのウル、改良は禁じられていますよね」「そうさ。中央のわからず屋どもはウルの価値をわかっていない」「いや、私は、ウルが永遠の命を復活させるきっかけになっては困る人がいるからじゃないかと思いますけどね」「永遠に枯れない花と、ウルは別ものだと」「それが、わからない人達もいるわけですよ」「ウルがもっと多くの繭期のヴァンプを救えるかもしれないんだよ?」「繭期のヴァンプを何万人死なせようとも、永遠の命の復活は防がなければならない」

「それが、お前の任務なんだね」「そんなことは一言も言っていませんが、ご賢察いただいて助かります」

紫蘭さん、あなたがクラウスをTRUMPじゃないかと疑ったのは、ソフィさんがクランの火災以降、不老不死になったと考えているからですよね」「私じゃない。ソフィがそう言うんだよ。何度も何度も、熱にうなされながら」「だが、クラウスという人物の名前は火事の一件以来、歴史から消えてしまう。そうなれば火事で死んでいると考えるべきでしょう。死んでいるんだから彼はTRUMPじゃない。ソフィさんは、いえ、ファルスさんは、とっくにこの世にいない男を探し続けているんじゃないでしょうか」「死んでいるのなら見つかるわけはないね」「そうして考えると、息子さんを不老不死にしたのは、お父さんであるクラナッハ博士の研究の結果だという可能性が非常に高い。なぜなら、目の前にあなたがこうしているからです」「面白いお伽話だった。お前さん、繭期が過ぎるようだ」

「私はハリエットじゃないし、ファルスを産んだ覚えもない。ファルスがソフィ・アンダーソンだなんていう証拠もない。そもそも不老不死とか突拍子もなさすぎる」「TRUMPが実在するとか言う世迷い事よりは、確からしいと思うんですけどね」「お前は、前から聞こうと思っていたのだけど、どうしてそうまでしてTRUMPの存在を否定するんだい?」「TRUMPなんていないからです」「以前にスノウと諍いを起こした時も原因はTRUMPのいるいないだったと聞いたよ?そうまでしてなぜTRUMPを憎むんだい?」「なんの話です。やめてください」「もう、スノウのことは許しておやり。仕方なかったんだ」「余計なお世話です。自分の憎しみくらい、自分で解決する」「お前がブラドに籍を置くこととTRUMPを憎むということにどういう関係があるんだい?もし、私に話せるのなら」「お節介はやめてください。私がTRUMP嫌いであなたたち一家になにか迷惑がかかりますか?」


「わたしは、お前のことだって心配なんだよ」マリーゴールドはその言葉にカッとなると

「母さんでもあるまいし、あなたにそんなことを言われる覚えはないわ!」

紫蘭は立ち上がると手近にあったウルを掴んでマリーゴールドに握らせた「マリーゴールド、ウルをお飲み。また、繭期の頃の自分に戻りたくなかったら」「こんなもの、気休めじゃないの!」

マリーゴールド、あの頃のクランとは違う。お前たちの事件以来、みんな変わった。私たちはみんなお前のことを愛しているんだよ」「いい加減にして!」

「私はあなたたちのことなんか大っ嫌いって何度言えばわかるの!」

激昂したマリーゴールドは逃げるように部屋を出て行った。紫蘭は、ますます死んだクラナッハに面影の似てゆくファルスを見ながら呟いた。

「そうか、お前が追っているのは、TRUMPなんだね。お前の、血の根源。マリーゴールド

「あ、マリーゴールド」カトレアが声をかける。マリーゴールドは一瞬、彼女の方を見たがそのまま部屋に入りドアに鍵をかけてしまった。カトレアはマリーゴールドが泣いているのを、見た。

握りしめたウルを一気に口に頬張り、水差しの水で喉に流し込むマリーゴールド。ベッドに仰向けに倒れ込み、顔を腕で覆った。その頬を伝う涙。

(私は、お前のことだって心配なんだよ)(母さんは私がダンピールだから嫌いになったんだわ!)(なぜそんなことを言うんだい)(私はダンピールも嫌い、ヴァンプも嫌い、TRUMPなんか大っ嫌いよ!)(私たちはみんなお前のことを愛しているんだよ)(母さんなんて大っ嫌い!)

いつしかマリーゴールドは眠りに落ちている。涙の跡だけが頬に残った。