キース・ジャレットとか。キースの売り文句は「女子大生に人気のあるジャズ」ぶはっ! まぁ、本質ですよ、そこは。
それはさておき「おしゃれなジャズ」の創始者はビル・エヴァンスである。
Bill Evans/Blue in Green
それまでジャズにおけるピアノというのは一部の例外をのぞいてパーカッシブに演奏されるか、奇妙な跳躍に彩られたファンキーな楽器として「真っ黒に」扱われるのが主だった。エヴァンス以前のエヴァンス的な演奏者はラウンジピアノかあるいはカクテルピアノと呼ばれて嘲笑の対象となっていた。それを根底から覆したのがこのビル・エヴァンスである。
で、エヴァンスはこんなところで紹介する必要もないくらい誰でも聴いているから以後無視するとして、問題はそれ以降の「おしゃれピアノ」の演奏者たちだ。これをまとめて「エヴァンス派」ピアニストと呼ぶ。
Denny Zeitlin/Quiet Now
ますはデニー・ザイトリン。なぜかレコード音源が落ちていないので音質は悪いが最高傑作「Quiet Now」を。
Don Friedman/Circle Waltz
あざといくらいカッコいいテーマが光る「サークルワルツ」ドン・フリードマンは一発屋と言って差し支え無いと思うが、いい曲を残した一発屋だ。この曲、ベースが実にかっこいいのでソロパートはベースから耳を離さずに。
Steve Kuhn/A Change Of Face
スローばかりだと疲れるので、ここでアップテンポな曲を。スティーブ・キューンは60年代をほぼ棒に振った名ピアニスト。原因は4週間でコルトレーンのところをクビになったからではないかと思うが、一時期不遇な時期を過ごしたキューンがECMと契約して再起した一発目がこの曲を収めた「トランス」だ。本人的にはこれは自分の世界ではないとのことだが、なかなかどうして、時代に即したいい音を聞かせてくれる。
Steve Kuhn/THREE WAVES
コンタクトというレーベルに吹きこまれたトリオ作品。途中で必殺のグルグルドカン奏法(命名bluetone)が一瞬炸裂するが、まだまだ大人しい。この人の荒々しいプレイはやはりアート・ファーマー「ブルースをそっと歌って」を聞いてもらうほかはあるまい。エヴァンス派随一の暴れん坊がキューンだ。
Paul Bley/Ida Lupino
ポール・ブレイはESPに吹込みを残していることからもわかるように、フリーの素養を持ったエヴァンス派ピアニストだ。この曲は嫁のカーラ作。上記THREE WAVESでも演奏されているが、このバラバラに分解された感はさすが。耽美なのがブレイで耽溺するのがキューンである。
70年代以降にもエヴァンス派は生まれたが、個性というと今ひとつという気もしないではない。
Stanley Cowell/Equipoise
ジャケは酷いが(泣)内容は折り紙付きなのがスタンリー・カウエルの「ムサ」これはいいアルバムなので「幻想組曲」と併せて買いましょう。
Harold Danko/After The Rain
美しいピアノを聴かせるハロルド・ダンコ。うまいんだけど個性はない。そこがブレイクの妨げになっているんじゃないかなぁ。。。
おまけ
Stan Getz/Litha
別にエヴァンス派でもなんでもいいのにエヴァンス派を自称してしまうチック・コリア。ブルーノート在籍中は録ったアルバムアルバムボツにされた挙句ドラムを叩かされるなどのひどい目にあったチックだが、このアルバムあたりでのプレイはやはり光る。ゲッツも素晴らしいがこれはやはりチックを称えるべき仕事。